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薫殿を抱きしめたまま、 自分自身が今まで抱えて来た想いを全て伝えた。 体中を渦巻く嵐の様な感情に押し流されそうになりながら 必死の想いで言葉を紡いだ。 今、口を噤いでしまえば、もう二度と想いを口に出来そうにない。 必死だった。 今まで抱いていた想いを全て薫殿に伝え、漸く口を噤む。 静寂の中、嵐の様な感情が漸く凪いでくる。 果たして、彼女はどう思ったであろうか? 『今更…』と、怒り、呆れるだろうか? 彼女の体を離すまいと、頑に抱き締めていた腕をそっと緩めた… 拙者の腕から開放された薫殿は、顔を上げず俯いたまま 「剣心は…どうするの?」 と、問うて来た。 「どう、するとは…?」 「…剣心が、私を好意を持っていてくれたってこと。本当に嬉しい。 きっと、私じゃ駄目なんだ。って、ずっと思ってたから… 剣心の中で私は少しでも『女』だったって分かって、嬉しい。」 「…」 「でも、これからどうするの?ここに残って、私との幸せを… 剣心自身の幸せを求めてくれるの? ここに残る事は、剣心の生き方を制限する事に…なるんだよ」 顔を上げずにポソポソと呟く。 きっと、今『やはり、出ていく』と言っても、 彼女は泣きながら納得するんだろう。 自分の気持ちより、拙者の気持ちを優先して… 「狡い、言い方だとは分かっている… この様な答え、薫殿の求める事ではないと思う。」 何て言えば良いのだろう? 「…拙者は、薫殿が拙者との未来を『望んでくれる』のであれば… 薫殿とこれからの日々を『この場所』で、過ごし…たい…」 最後の最後まで他人の意見に自分の気持ちを乗せる様な聞き方… 自分でも本当に情けない。 でも、自分の言葉で想いを告げる事にまるで自信が…ない。 ほんの一刻前までは自分の生き方…、自分の考えを一つも疑わず、疑えず… ここから離れていく事だけしか考えていなかっと言うのに。 ここから離れたくない。 薫殿から離れたくない。 彼女が誰かのもの(妻)になるなど、…考えたくもない。 薫殿の言葉を待つ間。 一瞬が永遠かと思われた。 彼女が自分を好いていると、誰よりも想ってくれていると分かっていながら なおも、彼女に言葉を求めている…。 「…狡い。」 薫殿が抑揚のない声でつぶやく。 どくんと胸が鳴る。 ああ、薫殿の顔が見れない。 怖い。 … 凪いで来た気持ちがまたざわめく…。 「私はずっと前から、一つも気持ちは変わってないのに…。」 その言葉に弾かれる様に顔を上げると、そこには…薫殿の笑顔。 「拙者は…」 「私が望めば、剣心は私との幸せを…剣心自身の幸せを望んでくれるのでしょ?」 「…っ」 「私はいつだって、そうなれば良いと望んでた。だから…」 「…だから…」 「もー!だから!私が『望む』から、ずっと、ずっと!ずーーと!!」 「…望んでくれる…」 はたと気が付く。 薫殿は答えをくれてるのだと。 「薫殿…!!」 「っはい!!」 「あと、…せっし、あ、いや、…。なんとも、言葉にするのが難しい…で、 ござるな…えっと、その…。拙者は、薫殿の側に、居たい…」 「…うん」 「共に生き…たい。」 「…うん。」 「共に子をなし、幸せになりたい。」 「……う…ん。」 「拙者は人並みの幸せを薫殿に与える事は出来ないだろう。 それでも、やはり、薫殿の側に居れないのは辛い。諦めきれない。」 誰かに『口八丁』だと言われた事もあったが…全く頭も口も回らない… 幾度も詰まりながら言葉を紡ぐ。 「拙者は、薫殿と、二人で…薫殿の幸せと、自分自身の幸せの為に、 ここに留まる。 だから…、だから、薫殿。拙者の家族に…なって、欲しい…。」 「………はい。」 小さい声だったが、確かに聞こえた薫殿の声。 この言葉を聞いた時、幸せで胸が詰まって、泣ける事を初めて知った。 文字にすればたった二文字。 拙者は、この時の薫殿と、薫殿の声をいつまでも忘れない。 *** 胸が詰まって泣きそうになったものの やはり、好いた相手に泣き顔は見られたくない。 部屋を飛び出すわけにも行かず、苦肉の策に彼女を再び抱き締めた。 薫殿も薫殿で今まで抱えて来た想いが急に昇華され、 心が不安定になっていたのか、 抱き締めたとたん拙者の胸の中でポロポロと泣き始めた。 互いに何も言えぬまま、抱き合う。 程なくして、心が落ち着いたのか、どちらともなく腕の力を緩めた 薫殿の眦には今だ涙が溢れそうになっている。 そっと、頬に手を当て、親指で優しく拭う。 拭った先から新たな雫がうまれる。 「そんなに泣いたら…目が溶けてしまいそうでござるな…」 そんな事を言う拙者に 「私が泣いてるのは剣心の所為だからね」 少し怒った様な薫殿の声。 …薫殿の声を聞くと何故か、安心する。 はにかみながらもポロポロと涙を零す薫殿の顔を見るうちに、 今までだって、人知れず泣いていたのではないだろうか…と、思った。 「今までも、一人で泣いてたでござるか?」 …思わず聞いてしまった。 「!」 「一人で、…泣いたりしてた?」 「…」 頷きはしないが黙り込んだその様子から。 泣かせて居たであろう事実が浮き彫りに。 知らない間に拙者の不用意な発言や行動で泣かせていた。 救い様の無い馬鹿な自分が情けない…。 「でも、それは剣心のせいじゃ無いからね?」 顔を真っ赤にして、泣きそうなのをこらえて気丈にそう言う。 こんな時でも薫殿は拙者を責めない… 「良いんでござるよ、薫殿。拙者を責めて良いのでござるよ。」 いつだって笑顔で居て欲しかった薫殿に涙を流させたのは 紛れも無く自分だから。 「だって、私は剣心を責めたいんじゃないもの。憎いんじゃないもの 好きで好きで…兎に角、好きで、私を見て貰いたかっただけ…。 剣心の目に私が私の望む形で映ってないのが淋しかっただけだもの」 思っても見なかった返答に、暫し言葉を忘れる…。 「…ありがとう。」 「私も、ありがとう。」 ありがとう。 この言葉に一体いくつの気持ちが込められているのだろう。 様々な気持ちが内包された『ありがとう』 いつだって、言葉が足りない自分。 いつだって、一人で勝手に決めて、周りの想いも閉じこめて。 望むものは諦めるのが常だった。 望んでくれてありがとう。 欲してくれてありがとう。 薫殿の頬に残る涙の後を唇でそっと辿る。 くすぐったさや恥ずかしさで身を捩る彼女をクッと抱き寄せて そのまま頬に口づけを幾度も落とす。 頬から眦に。 涙を吸い取り、こめかみに口づける。 幾度も幾度も。 愛おしいと言う想いが伝わる様に。 所作無げに胸元に添えられていた薫殿の手が着物を掴む。 目線が合わさる…。 そのまま、そっと唇を合せた。 一瞬触れ合った唇はすぐさま離れ、また触れ合う。 欲の籠っていない清らかで幼い口付け。 幾度か唇を合せた後、薫殿の顔を伺ってみる。 …と、 すっかり固まり、耳から頬から朱に染まっていた。 「薫殿?」 「…ぁの…っ///」 「何でござるか?」 「私、いま、剣心と???」 「ん?」 「その??くく、くち、くちっ///」 「…口吸いでござるか?」 「!!!!!!」 「したでござるな。」 「何でそんなに冷静なのよーーー!!」 薫殿からすれば冷静に見えるらしい… 心情的には口から心の臓が出そうなのでござるがな… 「冷静では無いでござるよ」 「嘘!」 「ほら。」 拙者の胸元の着物をグッと握りしめていた薫殿の手を そっと外して胸に触れさせる。 「!」 「嘘では無いで…ござろ?」 手にあたる鼓動は常に無く早い。 「剣心も?」 「薫殿にこうして触れるのは…初めてでござるから…」 「…ぅん。///」 「もう一度、触れたいと思うのだが…その…触れても?」 「!!/////////…(コク)」 俯いてしまった薫殿の顔を両手でそっと持ち上げる。 …先程と同じく、そっと、怖がらせない様に…口付けを落とす。 今度は少し啄む様に柔らかい唇を食んで見る…。 …ひくり。と反応するが、未だに目は閉じられたまま。 唇もクッと閉じられたまま。 もう少し…味わいたい。 薫殿の反応を伺いつつ、唇をひと舐めしてみる。 …意外と…強情と言うか…我慢するでござるな… そっと吸い付いてみる。 ちゅ。 ちゅ。 時折、ふるりと体が震える以外は頑なまでに閉じられた瞳と唇。 かり… 流石に少し歯を立ててみたのには驚いたようで 薄らと薫殿が口を開けた。 好機とばかりにそっと舌で薫殿の口腔に触れてみる。 そのまま口腔を探り、舌を吸い上げる。 逃げられない様、頭と腰を固定する。 ちゅ。 ちゅ。 「ん…ぅ…ふぁ…!っあ…むぅ〜〜!!!」 何か言いたげに口を開く度に深く奪う様な口付けを落とす。 「…っ!!」 胸元をトン!トン!! と、叩かれ、名残惜しげに唇をひと舐めして開放してやる… 「剣心のばかぁ!///」 「お、ろ…(汗)」 少し、調子にのり過ぎたでござろうか… いや、でも、むむむ。 「吃驚したんだからね!息だって苦しかったのにっ」 「…(ニコ)」 「???」 ちゅ。 ちゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。 「ぷはっ///け!む〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」 ちゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。 …口吸いとはこんなに良いものだっただろうか…。 もっと、したい。もっともっと。ずっと。 と言うか、吃驚させない様にと思っていたのだが… どうも…まずいでござる…な… 「…///」 「そ、その、薫殿…」 「なによう!///」 「や、ははは…あ〜…と、そ、そろそろ拙者は自分の部屋に戻るでござるよ」 「!?」 「ええと、明日の事は、拙者が直接その、相手側に挨拶に行く故、 薫殿は心配せずに寝るでござる。」 「なんで???」 「へ?」 「なんで?部屋に戻っちゃうの???」 「や、なんで…って」 さ、流石に… この状況化にあと三分も居れば 確実に… 確実に。うん…我慢出来る自信無し。でござる。 「…薫殿事が大事だから、部屋に戻るのでござるよ」 「?」 「あああと、言葉が足りないで…ござるな。 …このまま薫殿を腕の中に閉じこめていると…抱きたくなる。 今直ぐにでも、妻にしたくなる。だから…でござる。」 足りない言葉を直球で補うのが何とも…情けない。 が、これが事実でござるし。 実は先程から頭の端でムクムクと男が頭を擡げて来ている。 「私を…妻に…?えっと、今すぐ…???」 「…では、その、お休みでござる!」 今まで離さなかった薫殿の体を、ベリッと音がしそうな勢いで剥がし その場から立ち去ろうとした。 が、 逃すまいかとばかりに薫殿が体当たりして来た。 「まって!」 両足を抱え込まれ、そのまま前につんのめり、 顔面から畳に着地。 ぶ、無様でござる。 「アイタタ…???か、薫殿?」 「行っちゃ駄目!」 「へ?」 「今日は駄目!今日だけは駄目!絶対駄目!」 「????はい?」 涙目で訴えられるも、 何故、ここまで頑になるのか分からない… 「朝起きて…剣心居なかったら!!」 ポロポロと流れ落ちるのは、さっき止まったはずの涙。 また、泣かせてしまった。 …やはり拙者は朴念仁でござるな。 散々気を揉ませ、漸く想い通じ合ったものの 薫殿にはまだ実感がわかないのであろうし… 何より、未だに不安なんだ。 拙者がひとり、旅立たないか。 心を決めた今、それはあり得ない事でござるが 薫殿には分からないのも道理でござるな… 「その、薫殿?分かったでござるから、手を…離して?」 不安そうな瞳で、拙者を見つめながら、そっと手を離す。 「側に居るでござるから。今日はもう、寝るでござるよ。」 優しく語りかけ、腕をとり、引き上げる。 そのまま薫殿が延べた布団に誘導し、自分自身はその脇に座る。 「一緒の布団には…入らないの?」 …ぐ。 恐ろしい事を言ってくれるでござるな… この状態でも蛇の生殺しであるというのに…。 「拙者はここでいいでござるから。」 「…」 「さ、布団に入って?」 「ね、剣心。」 「ん?」 「今日お嫁さんにして、って言ったら困る?」 ………………… 「ん?」 何か今とんでもない台詞が耳を右から左に流れた様な… ………………… 「だから、今日、私が、剣心のお嫁さんになるのは困る事?」 ………………… は、い? 「うええええええええええ????」 突拍子の無い薫殿の申し出に思わず脳内が氷河期まで遡った…。 寒風吹きすさぶ雪原でマンモスを愉快にドテチンと追いかけてる場合じゃない。 「って、薫殿!その発言の意味がわかっ…」 「わかってる!そこまで無知じゃない!!////」 「て、ててて???」 「駄目な事?」 「駄目とか良いとかって言うと御法度…や、個人的には大歓迎で…!?」 だ、だめだ! 動揺している!! 「いいの?」 「それはこっちの台詞です!」(何故敬語!) 「今日じゃ駄目なの?今日でも良いの?」 あああ。 ど、どうすれば良いのだろう。 このまま自分のものにしてしまっても良いのだろうか。 やはり、手順を踏んで…?? 「私は早く剣心の家族になりたい。」 「!」 「一緒になりたい。」 好いた相手に(しかも一回り程も年若い女性)ここまで言われて 何も無いのはあり得ない。 あああ(悩) 理性を繋ぎ止める枷が凄い勢いで外れて行く。 最後の理性をコレでもかと振り絞って、 「薫殿、その、男女の営みは…初めは女性が辛いものなのでごさるよ」 とか言ってみる。 「拙者は、薫殿にはその、あまり痛い思いなどはさせたくなくて」 も、だめ、しどろもどろも良いとこでごさる(チーン) 「でも、いつかは体験するのでしょう?」 ぐ。 その通りでござる…な。 「だ、だが、その今日で無くとも」 「剣心は私じゃ…やっぱり…」 「あわわ!!だ、だだだ!違うでござるよ!!あ〜あ〜…!だから!!」 も、だめ。限界点。 水無月 某日 緋村剣心 (6/12 剣心降臨中:さやか) 前の日記に戻る 次の日記に進む |
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